2017年7月1日土曜日

元地域おこし協力隊員が町を提訴へ

 中日新聞などによると、三重県南伊勢町の臨時職員の女性が、町を相手どって慰謝料や休職中の給与などの損害賠償を求め、津地裁伊勢支部に提訴しました。
 この女性は昨年7月に、地域の活性化や若年層の定住を促す「地域おこし協力隊員」として他の男女2名の隊員と共に南伊勢町役場に1年契約で採用されていました。
 活動の中では、集落の祭で、途絶えていた行事を半世紀ぶりに復活させたのに携わるなどしていたそうですが、職場でのパワーハラスメントが原因で休職に追い込まれたとして提訴に至ったものとのこと。ちなみに、南伊勢町では同時期に採用された隊員のうちもう一人の女性も、理由は不明ながら今年3月で退職しています。
 はんわしブログでも地域おこし協力隊については何度か取り上げています(最下段にリンクあり)が、全国で隊員の累計が4000人にもなったこの活動は、大きな成果を上げている反面、このようにトラブルになったり、早期退職するケースも相次いでおり、一つの曲がり角に来ていることは間違いありません。端的に言えば、隊員の意欲や能力を活用して生き残れる集落(自治体)と、活用できず衰退がほぼ確定的となった集落とが、この数年間で明確に判別されるようになったということです。


 地域おこし協力隊員には、当然ながら採用された自治体に引っ越して定住する(住民票を移す)ことが求められます。しかし訴状や記者会見によると、提訴した女性隊員は南伊勢町役場から住居を紹介されたものの築40年の雨漏りする住宅であり、津波の懸念もあったため近隣市のアパートから通勤していました。
 すると複数の役場職員から「引っ越ししろ」などと強要され、雇用契約を打ち切るようなことを言われたり、仕事で嫌がらせを受けたりしたとのこと。11月になると上司らから「なぜ引っ越さないんだ」などと約3時間にわたって怒鳴られ、机を蹴られたため出勤できなくなり、適応障害と診断されて休職(6月末で退職)。今も自宅療養を続けているそうです。また、この元職員は未払いの時間外勤務分の割増賃金の支払いも、同時に請求しています。
 こうした言い分に対して、町役場は「訴状が届いておらずコメントできない」としています。
 
 地域おこし協力隊員は最長3年間の有期雇用であり、任務終了後もその地域で定住し続けることが期待されており、そのための「仕事づくり」の活動が重要視されています。
 しかし一方で、地縁血縁が強く新参者には容易に心を開かない地域(集落、コミュニティ)も日本には現実に多く存在しており、地域になじめない、さらには取り組もうとした新しいチャレンジが地域の慣習を破るものとして反発されたりと、地域内で孤立してしまうことも少なくありません。
 さらに、特産品の開発や観光集客、SNSによる情報発信などが、今まで市役所や役場が進めてきた方針 ~よく「護送船団方式」と言われます~ と異なったり、既得権を奪う面があることから、和を乱すものとして否定されることもまた、よく散見されます。

 このような問題に対応するため、地域おこし協力隊事業の実施元である総務省は、昨年9月に隊員向けのサポートデスクを設置し、悩みを抱える隊員や自治体からの相談に応じています。しかし、これはしょせん緊急事態をいくらか緩和するに過ぎず、根本的には、受け入れる自治体や、隊員を住まわせ、共に地域おこしに取り組む集落やコミュニティーがどのような展望と戦略を持ち、地域外の若者である隊員をどう使いこなすかにかかっています。
 このような人材活用のスキルがない自治体や集落にいくら隊員や国費を投じても、もはや地域活性化は難しいと考えざるを得ません。過疎集落の人口が全くのゼロになるケースは少ないでしょうが、自主的・自律的なコミュニティの再構築は不可能になるでしょう。過疎化、高齢化は30年以上前から我が国全体の社会問題であり、過疎法や離島振興法といった法律が作られ、いろいろな公共事業やソフト事業は行われてきましたが、地域おこし協力隊員すら結果的に使いこなせない集落は、衰退がもはや不可逆的なポイントを超えているのです。

 残酷ではありますが、無駄なことはやめ、未来志向の何か別の方法を考える必要があるでしょう。
 その前提として、行政が ~市や町村なのか、県なのか、国なのかはともかく~ どこまで住民サービスを行うべきのか、また、コミュニティ維持的な村落共同活動まで担うべきなのかどうか、の議論は必須だと言えるでしょう。

■はんわしの評論家気取り
 地域おこし協力隊、56%が多いか少ないか(2014年2月23日)

 なんちゃって地域おこし(2016年6月21日)

 (-。- )ふゥーなお話(2016年12月29日)

 原因ははっきりしていると思うが(2017年4月2日)

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