2017年6月4日日曜日

住民のものだけではない市長選挙

 尾鷲市の市長選挙が6月4日に告示されたとのことです。わしは当然もはや市民ではないし、特定の政治的立場もありません。しかし、このブログは尾鷲在住の方にもご覧いただいているようなので、尾鷲市長選は市民(有権者)だけのものではなく、三重県全体、いや全国の過疎地域全体に情報共有されるべきものだと思います。
 どう言うことか。
 よく田舎(失礼!)の首長選挙や議員選挙では、「○○市から日本を変えよう」とか、「△△市の活性化なくして日本の活性化なし」などというスローガンが唱えられます。日本はこれからさらに少子化と高齢化が進みます。尾鷲市や鳥羽市のような地域は、来たるべきこれらの課題の先進地であり、もしこうした地域で子供の数が増えたり、高齢者が生き生き暮らせるような施策を行い、成果を上げることができたなら、これが日本全土に展開されるようになる。つまり、地域イノベーションの先頭に立つことができるのです。
 選挙活動は票目当てなのは当然ですが、少なくない候補者は、きっと我が市、我が街・村がそういった成功例を生み出す地域となりたいと本心から確信してはいるのだと思います。(思いたいと言うべきでしょうか。)


 ここで、尾鷲の話につながります。わしは10年近く前、尾鷲市に住んでいたので、当時から尾鷲市は高速道路の開通を開通を見据えて地域活性化に市の総力を挙げて取り組んでいたのを知っています。
 また、それ以前に、政府主導の「ふるさと創生政策」でも比較的熱心に活性化に取り組んでいる地域であることも知られていました。

 では、その結果はどうなったでしょうか。
 バブル経済が崩壊に向かう直前、最後の輝きを放っている頃に政府が地方活性化の切り札として主導したのが「ふるさと創生」です。尾鷲市はこの財源を活用して天文台(尾鷲市立天文科学館)を建設しました。県内でも有数の大きさの反射望遠鏡を持ち、確か天文学専門の学芸員も配置されたりして、平成2年のオープンの時は大きなニュースになりました。また、尾鷲市も「星の町」をキャッチフレーズにして、観光パンフレットなんかに盛んに刷り込んでいました。
 当時から漁業や林業など伝統的な地場産業は斜陽化しており、行政や政治は天文台を観光資源にして市を活性化しようとしたのです。
 しかし、四半世紀後の今、尾鷲市が星の町だというイメージを持っている人はほとんどいないと思います。定期的に天体観測会が行われてはいますが、尾鷲では市民の天体観測が特に熱心だという話も聞きません。
 そもそも天文台建設時に計画された成果がどのようなものを目指していたのかはわかりませんが、少なくとも地域活性化に多大な貢献をしているとも思えません。

 その約10年後。今度は尾鷲湾の急に水深が深くなる地形を生かして、海洋深層水を取水し、それを使って新産業を興そうという政策が提唱されました。
 ちょうどそのころ、沖縄や富山、高知などで海洋深層水の取水と産業利用が始まっており、水質の清浄さやミネラルの豊富さなどが注目されるとともに、何よりも海水なので無限に取水可能であることもあって、33億円以上の建設費を投じて平成18年に取水が始まったのでした。
 尾鷲市はこれを再び地域活性化の起爆剤とし、鮮魚運送や養殖など水産業に活用するとともに、温浴施設の建設、深層水を使った商品開発支援、深層水を活用する企業の誘致、などを行いました。それが今や市内屈指の観光施設になっている「夢古道おわせ」であり、深層水をボトル詰めしている「尾鷲名水(株)」や、製塩を行っている「(株)モクモク塩学舎」といった企業です。これらは確かに海洋深層水事業が生んだ大きな成果です。

 しかし、10年経った今、残念ですが尾鷲市は人口が減少し続け、高齢化が進展し続けています。
 わしは、今までのこうした尾鷲市の取り組みを批判しているのではありません。
 少子高齢化の進展や第一次産業の低迷は全国的にますます深刻になっており、小さな市の取り組み程度で挽回することは不可能な局面にまで来ているのです。むしろ、尾鷲市は北海道や東北、あるいは四国や南九州の深刻な地域活力低下に比べて、はるかにましな状況かもしれません。

 ただ、間違いなく言えることは、ハードウエアの整備で、それも国や県の財政負担を前提にした計画によって、地域産業を活性化したり、地域コミュニティを再生することはもはや不可能だということです。
 今、ある学校法人が、政府の地域戦略特区を活用して大学を新設することが大きな政治イシューになっていますが、これも見落とされている大きな課題は、その大学の経営がこれから先うまくいくと思えないことです。(おそらくそう遠くない将来、経営は行き詰まるとわしは思います。)

 やはり重要なのは、その時々の国の政策や、世間の流行に左右されず、愚直に、コツコツと、市内にある企業の経営革新を支援し、大消費地で特産品や観光のプロモーションを行い、移住者を受け入れて定住を丁寧にサポートし、市民生活に不可欠な病院などのインフラをきちんと整備すること、それに尽きるでしょう。
 何も目新しいスローガンなど掲げる必要はないし、国や県に頭を下げて新しいハード施設など建設する必要もないのです。

 過去から講じてきた活性化策が必ずしもうまくいかず、次のうち手をあぐねている地方自治体は全国に多くあります。一方で、ふるさと納税やクラウドファンディングといった、市外の人々が財政的な応援ができる仕組みも発達しています。
 今必要なのは、こうした事例や資源(人材、情報、お金など)を全国規模でネットワークし、市民をはじめさまざまな人がかかわって、よりよい政策を考えていくことではないかと思います。

 尾鷲市の新市長が、そうした一皮むけた地方活性化に目を開いていただき、地に足の着いた、身の丈に応じた ~したがって、未来に向けて持続可能な~ 取り組みを進めていただくことを期待せずにおられません。

1 件のコメント:

まろ さんのコメント...

副市長に推薦しておきますm(__)m