2017年6月15日木曜日

相対的に見てみよう

 三重県が「平成28年観光レクリエーション入込客数推計書・観光客実態調査報告書」を公表しました。
 これによると、平成28年の三重県内の観光入り込み客数は4189万人となり、平成27年から267万人(6.8%)の増加となりました。これは伊勢神宮の式年遷宮があった平成25年の4080万人も上回り、現在の統計方法となった平成17年以来で最多の数字となりました。
 地域別に見ると、伊勢志摩が1000万人で7.3%増。中・南勢が824万人で何と30.7%の大幅増。その一方で、伊賀は5.3%減で303万人にとどまりました。
 観光地別に見ると、伊勢神宮が4.3%増の874万人、賢島エスパーニャクルーズが51.8%増の16万人、英虞湾景観(ママ)が41.9%増の15万人となっています。
 この結果を「G7主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の開催の効果」などと言っている人もいるようですが、国土交通省観光庁が先だって発表した「観光白書」によると、どうもこれは、そうではありません。


 観光白書によれば、平成28年の国内宿泊旅行者は3億2566万人で対前年比4.0%増、国内日帰り旅行は延べ3億1542万人と対前年比8.1%もの大幅増となっています。

平成29年版観光白書について(観光庁)より

 三重県の観光入れ込み客数調査とは単純な比較はできませんが、6.8%の増加が全国的に突出して多いわけではありません。たとえば、沖縄県も平成28年の観光客数は対前年比11.0%増の861万人となり過去最高となったことを公表しています。

 観光客が増加するのは、気候条件、そして何よりも人々が「旅行してみよう」と思い立つための経済的な余裕があることが原因です。アベノミクスには毀誉褒貶ありますが、景況は緩やかな回復傾向であり、これが観光ニーズを押し上げていることは明らかです。
 物事は何でも相対的に見ることが必要で、G7のような一過性イベントが観光客数を増やす効果はごく限定的、短期的なものでしょう。(端的に言えば、サミット警備のため数万人もやってきた警察官の宿泊や、非番の日の観光地見物が数字を押し上げているに過ぎないのです。)

 むしろ、鈴木三重県知事が言うように「サミット開催のチャンスを生かそうと県内の観光関係者が努力した結果」という見立てが正しいのだと思います。
 「観光白書」には、長期的に賑わいを維持してきた観光地の取組事例として伊勢市が取り上げられています。伊勢市では過去から、伊勢神宮の式年遷宮直後は観光客が激増するものの、数年で減少し、長らく低迷するというパターンが繰り返されてきました。しかし直近の平成25年に斎行された第62回式年遷宮では、やはり直後に観光客が過去最高にまで増加し、その後も比較的好調を維持しています。

 観光白書はそれはサミットの効果だなどとオカバなことは書きません。「式年遷宮に合わせた行政・民間の連携した取組により、観光入込客数が増加」、「官民が連携して門前町を整備、行政が長期的なプロモーションを実施、鉄道事業者が観光特急を導入する等地域で連携した取組」と分析します。
 大変合理的な考察であり、やはり同様にこの白書に取り上げられている、他の賑わいを継続している観光地も、民間が主導する設備投資やイベントや、官民が一体となった戦略的なプロモーションが功を奏していることが成功の要因なのです。

 日本の多くの地域では、従来の地場産業である農林水産業や建設業が衰退し、あらたに観光による地域活性化を志向しているところが多くありますが、観光地間の競争とはイベントの誘致や宣伝合戦ではなく、こうした愚直な、息の長い「観光地のまちづくり」に取り組んでいく競争なのです。これは観光資源に加えて、資金、人材、交通インフラなどの総力戦であり、このレッドオーシャンで勝ち残るのは容易ではありません。 

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