2018年2月18日日曜日

議論が混乱するもと

 ここしばらく、中小企業の経営者の方や、地域活性化(「地域おこし」などと呼ばれる)活動のリーダーのお話を聞く機会に恵まれています。
 わしが改めて思うのは、企業が行う活動、つまり事業とかビジネスとか営利活動などは、地域おこし活動に比べて、良くも悪くも目標が立てやすく、その活動が正しいのか否かは「損益」という指標で明確になる、という点です。
 むろん、企業のすべてが利益だけを追求している事業体ではありません。顧客からの感謝や、社会貢献、従業員満足などを理念に掲げ、邁進している企業もたくさん存在します。しかしそういった事業活動であるからこそ、それを継続するためには赤字では不可能で、利益を生み出さなくてはなりません。利益が出ないビジネスは、社会からは求められていない自己満足に過ぎないとさえ言えます。
 一方でその点、地域おこし活動のほうは、損益(業績)に相当する客観的な評価の物差しがありません。それどころか、事業活動の目標すら、ときとして明らかではありません。
 何のためにそういった活動をしているのか。目指すべき最終目標は何か。
 地域の人口が増えること。地域内での仕事(雇用先)が増えること。地域に若者が増えること。交流人口が増えること。漠然とした目標はいろいろあるのでしょうが、では交流人口が何年以内に何人増えれば目標が達成されるのか、という一歩進めた具体的な数値目標を持っている活動を、不勉強ながら、わしはほとんど知りません。

2018年2月15日木曜日

究極の地方創生対策か

 地域をPRする動画を作ったり、東京都心でイベントをやったり、B級グルメコンテストに参戦したり、移住者の家賃をタダにしたり、医療費をタダにしたり、などなど、ここ数年で全国各地の市町村が繰り広げてきた「地方創生競争」は、結局明確な勝者がないままブームが終焉しようとしています。
 そうした中で、追い詰められた自治体がやらかしてしまいそうな、いかにも本当にありそうな究極の地方創生対策が、この映画 羊の木 のテーマとなっている、刑務所の仮出所者の移住受け入れかもしれません。


2018年2月14日水曜日

三重産ミカン、タイのシェアは9割

 JA三重南紀が平成22年度から全国に先駆けて取り組んでいる、タイへのミカンの輸出が堅調であり、さらなる輸出拡大に向けて三重県の鈴木知事が農林水産省に対し、輸出検査の簡略化などについて日タイ両国で協議を進めるよう陳情したことが報じられています。
 2月12日付けの毎日新聞によれば、高い経済成長を続けているタイにミカンを輸出している都道府県は、意外にも静岡県と三重県の2つだけで、この結果、三重県産のシェアが9割以上を占めていることになるそうです。これはある種の先行者利益ということかもしれません。
 三重県産ミカンは現地の富裕層に高級フルーツとして認知されており、平成22年の輸出量は1.7トンだったものが次第に増加し、平成26年には19.6トンにまでなりました。
 ところがミカンの病気(カンキツそうか病)の発生が日本国内で確認されたことからタイ政府は輸入検疫を強化し、日本とタイの双方の検疫官による合同検査の義務付けや、防かび処理、害虫モニタリング調査が必須とされ、この結果、検査コストが上昇したうえに生産者の負担も増したことから、翌平成27年には輸出量が12.3トンと急減していました。

2018年2月13日火曜日

社長の後継者は息子・娘であるべきか

【読感】 日本の中小企業 少子高齢化時代の起業・経営・承継 関 満博著(中公新書)

 関 満博氏といえば、中小企業振興業界の超有名人で、知らない人はいないでしょう。東京都(中小企業指導所)に奉職以来、一貫して現場主義を標榜し、大学教授に転身してからも全国の中小企業を巡って収集した事例を本や講演で発表しておられ、おそらく著作は数十冊はあると思います。
 しかし本書の中で図らずも関さんが言うように、中小企業は「業態も千差万別」で、「その特徴を端的に表現することは難しい」面があります。このため、関さんの著書の多くは ~わしの理解できる限りでは~ 全国の優れた中小企業の事業取り組みや、ユニークな産業支援の事例集であり、日本の中小企業は今後こうしていくべきだと大上段に構えた「産業政策論」などでなく、読者はこれらの個別の取り組み事例を参考にしながら、自分なりに噛み砕き、企業は経営努力を、支援機関は支援努力を、地道に細く長く続けていくべきだ(それ以外に特効薬などない)という結論がほとんどです。
 本書も例外ではなく、「新規起業」、「既存企業の新事業展開」そして「事業承継」の3つの大きなテーマで、関さんが知るベンチマーク企業が紹介されるという構成で、課題の整理と事例の勉強に役立つ内容です。

2018年2月12日月曜日

話題のクロフネファームに行ってみた

 ビュッフェスタイル、昔ふうに言えば「バイキング」形式のレストラン、クロフネファームに初めて行ってみました。開店はおととしの12月ということなので、もはや旬の話題とはいえないかもしれません。しかし、従業員のうち約20名が障がい者であるという就労継続支援A型事業所として運営していること、そして「身体、地域、環境にやさしい」をコンセプトとした野菜を中心としたメニュー構成であり、実際に食事をした人の評判も大変いいようなので、この連休に行ってみることにしたのです。
 場所は、ララパの裏のクリニックとかがたくさんある道の角っこです。ここには以前、「KUROFUNE」という、イギリスの古い教会の古材を流用して建てたというレストランがありました。創業者だった中村文昭さんのユニークな人柄を反映して、ホールスタッフのおもてなしやサービスが非常に有名なお店でした。
 このクロフネファームにも中村さんは関わっているそうで、巷にある凡百のバイキングレストランとは一味違う、新しい、ユニークなコンセプトが期待できそうです。

2018年2月11日日曜日

わしが考える下町ボブスレー問題(その2)

(承前) わしが考える下町ボブスレー問題(その1)

 「総体としての町工場群」とはわかりにくいかと思いますが、要は一口に町工場と言っても、規模も経営方針も、資本も、持っている設備や技術も、ビジネスモデルも、さまざまであって、決して一枚岩の存在ではないということです。
 よくマスコミ報道などで、「アベノミクスで大企業は潤っているが、中小企業は相変わらず苦しんでいる」などと言われますが、これは間違いです。中小企業は数も多く、ゾウとネズミほどにも違う多様性があります。儲かっている中小企業や忙しい中小企業はいくらでもあり、しかも統計上はそれが増加傾向です。中小企業のすべてを一律に「弱者」とみなして、保護や育成が不可欠だと考えるのは、ヤル気があって伸び盛りの企業の活力をそぐとともに、経営能力に問題があり、生産性が低い企業までも生き残らせてしまうことにつながります。
 そうではなくて、企業が自分たちの考えでやりたいことを存分にやれる ~その代わりに失敗は自己責任になる~ 世の中にしなくては、日本は変われないのです。
 話を下町ボブスレーに戻します。世界レベルのボブスレー作りの旗の下に集まった100社にもなるという中小企業は、まさに「ヤル気がある」企業の集まりと言えます。
 問題は、では、プロジェクト「以外」の中小企業はどうなのか、ということです。

2018年2月10日土曜日

わしが考える下町ボブスレー問題(その1)

 わしはオリンピックにはほとんど関心がないのですが、例の「下町ボブスレー」の一件については関心を持たざるを得ません。日本の中小製造業が抱えている典型的な問題 ~売れるものを作るのでなく、作りたいものを作ってしまう「プロダクトアウト」志向~ が如実に表れたうえでの完敗に思えるからです。
 下町ボブスレーについては当事者による公式サイトがあるし(写真もそこから借用しています)、多くのまとめサイトがあるので、詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが、ごく簡単にまとめると次のようになるでしょう。
1)2011年、東京都大田区の町工場のグループが、大田区産業振興協会(はんわし注:東京都大田区役所の外郭団体)の発案により、競技用そり「ボブスレー」の開発と製作に取り組むこととなり「下町ボブスレープロジェクト」と命名された。
2)小さな町工場が集まって、世界のトップレベルに挑戦できる日本製ソリを作ることを通じて、産業のまちである大田区のモノづくりの力を世界に発信することが目的。
3)2016年にはジャマイカのナショナルチームが競技に採用を決定。昨年までに9台もの試作と改良を重ね、今回の平昌冬季五輪では上位入賞が期待されていた。
 ここまでは「下町ロケット」とか「陸王」的な、頑張る町工場、頑張る職人たちの美しいサクセスストーリーです。しかし事態はここで暗転することになります。